ヤマカガシ成体と孵化幼体の対捕食者行動を実験下,および,野外で調べた.室内実験1と2においては15度または25度の室温下でヘビの頚部,胴体部,および,尾部をヘビ捕獲用フックで繰り返し押さえ,発現する行動を観察した.室内実験3では孵化幼体に対して,不動のヒトの指,または動かしたヒトの指を提示するか(非接触刺激),あるいは指で胴体を軽くたたき(接触刺激),発現する行動を観察した.また,野外棲息地でヘビを捕獲するときに対捕食者行動の野外観察を行った.合計で17種類の対捕食者行動が観察された.このうち,頻度が高く見られた特徴的な行動は,"頚広げ","胴広げ","頚曲げ","頚打ちつけ","口開け","からだ跳ね"であった.接触刺激に対して常に頚部背側を提示する"頚部背側向け"も特徴的な行動であった.対捕食者行動は気温,刺激の種類,刺激を受ける体の部位,年齢の影響を受けた.成体においては"頚曲げ"は25度よりも15度でより多く観察され,一方,"逃避"は15度よりも25度でより多く観察された.孵化幼体では非接触刺激よりも接触刺激により,"頚(胴)広げ","頚曲げ","ストライク","逃避"が誘起されやすかった.成体においては対捕食者行動の個体差が観察された.ヤマカガシの特徴的な対捕食者行動である"頚広げ","頚曲げ","頚部背側向け"などは,頚腺をもっていることと関係していると考えられ,頚腺による捕食回避の役割を示唆した.